天然ゴムの原産地と東南アジアへの産地移転の歴史

天然ゴムの原料となるパラゴムノキは、もともと南米・アマゾン川流域にのみ自生していました。
19世紀後半、ゴムの需要が高まる中、ブラジル政府はこの重要な産業資源の独占を図り、種子の国外持ち出しを厳しく禁止していました。
しかし、この状況を一変させる歴史的な出来事が起こります。

イギリス人による種子の持ち出し
1876年、イギリス人のヘンリー・ウィッカムがブラジルから数万個のパラゴムノキの種子をひそかに持ち出すことに成功しました。
これらの種子はイギリスのキューガーデンで発芽させられた後、当時イギリスの植民地であったシンガポールやセイロン(現在のスリランカ)へと運ばれました。

東南アジアでのプランテーション拡大
その後、イギリス主導でマレー半島を中心に大規模なゴムのプランテーションが建設されました。
アマゾンとは異なり、東南アジアにはゴムの木の天敵となる南米特有の病害(南米葉枯病)が存在しなかったため、効率的な大量生産が可能となりました。
20世紀に入ると、自動車産業の発展に伴うタイヤ需要の爆発的な増加を背景に、東南アジア全体で天然ゴムの生産が急拡大しました。

現在の生産状況
1980年代まではマレーシアが世界最大の天然ゴム生産国でしたが、近年はより収益性の高いアブラヤシ(パーム油の原料)への転作が進み、生産量が減少しています。
現在では、タイ(年産約450万トン)、インドネシア(同約320万トン)、ベトナムの3カ国が世界生産の大半を占めており、世界の天然ゴムの80%以上がアジア産となっています。
南米のジャングルから始まったゴムの歴史は、今やアジアを舞台に世界の産業を支え続けています。